小児におけるインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に備えて
~お子様の保護者の皆様へ~
日本小児科学会よりお子様の保護者の皆様へメッセージが出されていますので、当ページでも紹介します
2020年春に新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まって以降、国内においてはインフルエンザの流行はありませんでした。しかし、今年は、先にインフルエンザシーズンを迎えた南半球の国々や中国の一部では、3年ぶりにインフルエンザが新型コロナウイルス感染症流行前と同じかそれ以上のレベルで流行しました。以上より、今年の冬は、日本においても今後インフルエンザが流行すると予測されており、新型コロナウイルス感染症との同時流行になるのではないかと危惧されています。
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は異なるウイルスによる病気(感染症)ですが、症状はとてもよく似ており、症状だけで両者を区別するのは難しく、両者を区別するには抗原検査やPCR検査が必要となることがあります。この2つの病気が同時に流行すると、熱を出した子どもが病院、診療所を問わず、発熱外来のある小児科や小児救急外来に殺到し通常の小児科診療が行えない状態になり、尊い命を救うための医療の提供も難しい事態となる可能性があります。そのような事態を防ぐためにはインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症の予防が重要となります。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの感染症の予防にはワクチン接種が最も有効です。インフルエンザワクチンは、流行が始まるまでに接種を完了させておく必要があります。なお、例年の流行は12月以降ですが、今シーズンの南半球の流行状況から、流行が早まる可能性がありますので、早めに接種することをおすすめいたします。また、新型コロナワクチンについては、現在5~11歳の子どもたちに対して小児用ワクチンの接種が実施され、10月末からは6か月以上の乳幼児へ接種が開始されています。接種後の発熱や痛みなどを心配されておられる保護者も多いと思いますが、5~11歳用ワクチンの副反応は12歳以上用ワクチンに比べて少ないことがわかってきました。加えて、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同時接種も可能で、接種間隔の制限はありませんので積極的にワクチン接種を受けることを検討してください。
一方、種々の感染対策をしていても、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症にかかってしまうことはあると思います。もし熱が出ても、機嫌がよく、経口摂取(哺乳)でき、普段通りに眠れている場合などは、まずはかかりつけの医療機関に対応を相談しましょう。もし、かかりつけの医療機関への相談や受診が難しい夜間や休日の場合には、子ども医療電話相談(#8000)の利用も可能です。ただし、2歳未満の子どもや基礎疾患を持っている子どもの場合は新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいことが報告されていますので、予めかかりつけの医療機関に相談しておくことをおすすめします。 インフルエンザと新型コロナウイルス感染症から子どもたちを守るためには、ワクチン接種と併せて、屋内の人込み等での適切なマスクの着用や適切な手洗い、十分な換気なども並行して行うことが大切ですので、これらの感染予防対策を心がけて頂きますよう、よろしくお願いいたします。
母子手帳(母子健康手帳)の有効活用を
~その1~
赤ちゃんを妊娠し、市役所に妊娠の届け出をすれば交付される「母子手帳」。正式には「母子健康手帳」といいますが、一般的に(慣例的に)われわれ医師も「母子手帳」と呼ぶことが多いので、この欄では“母子手帳”と表記します。
母子手帳に関することは、法律「母子保健法」に規定されています。
母子保健法第15条
妊娠した者は、速やかに、市町村長に妊娠の届出をするようにしなければならない。母子保健法第16条
市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない。2 妊産婦は、医師、歯科医師、助産師又は保健師について、健康診査又は保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない。乳児又は幼児の健康診査又は保健指導を受けた当該乳児又は幼児の保護者についても、同様とする(=健康診査又は保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない)。
と。堅苦しい法律用語で書かれていますが、要するに母子手帳には妊娠したときから(赤ちゃんが生まれる前から)のお母さんの健康状態・妊娠経過の記録とお子さんが生まれてからの健康状態、成長・発育について記録されています。赤ちゃんがまだお母さんのお腹の中にいるときからの様子が書かれているのです。子どもたちを診る(看る)われわれ小児科医にとってはその子の健康状態、成長・発育の記録が一目で分かる重要書類なのです。
母子手帳は子どもひとりにつき1冊なので、双子なら2冊、三つ子なら3冊。無事に生まれて出生届を提出すると、母子手帳1ページ目の「出生証明書」が記載され市長印が押印されます。母子手帳はお子さんにとっての“身分証明書”なのです。
大人は生活のいろんな場で身分を確認されることがあります。医療現場でもご本人の確認のためにお名前や生年月日をお尋ねし、時には運転免許証などの本人確認書類を見せて頂くことがあります。小さな子どもたちは運転免許証も学生証も持っていません。出かけるとき大人が運転免許証を持つように、母子手帳はお子さんと一緒に常に持ち歩くようにしましょう。
保健センターで健診を受けるとき、予防接種を受けるときはもちろんですが、風邪などで受診するときにも、お子さんの本人確認書類として母子手帳をご持参下さい。特に、お子さんのことをよく知っておられるかかりつけのクリニック以外の医療機関を受診するとき(休日急患診療所や旅行先、帰省先などでの受診)は、必ず母子手帳を持ってきて下さいね。子どもたちの健康状態、成長・発育のことが書かれている本人確認書類なのですから。